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    第2話:豊胸女と、ある新入社員の悲劇

    2017年6月14日

2017年6月14日

第2話:豊胸女と、ある新入社員の悲劇

あれは社会人になって最初の夏。支社の女の子たちと海に行くことになった。これだけだと爽やかな話だが、実質的にお見合いパーティーのような役割を果たしていた。

少し語弊があるか……本社の男はひと夏の(もしくはその場限りの)遊び相手探しだが、支社の女は本社の男を食わえ込むのが目的という面もある。この会社を跨いで行われるイベントは恒例であり、会社からも交流費という名目で(僅かだが)補助金が出ていた。

後で聞いた話だが、会社側にも目的があって、ひとつは本社の社員に嫁をあてがうことであり、もうひとつは定期的な支社の人員削減(というより人員回転)である。特に後者だが、事務員は女を採用するが、これは誰でも出来る仕事だから、長く居着かれると昇給して人権費がかさむ。だから20代くらいには辞めて欲しいというのが本音のようだった。本社の男と結婚ということになれば通勤するには遠すぎるので、自動的に退社ということになる。実際、全体的に見れば参加者は女性陣の平均年齢の方がやや高めだったのだ。

この「半ば仕組まれた」旅行の巧妙なところは、思惑は違うものの行為は相似であることだ。男はヤる気で来ているし、女はその気で来ているのだから、カップルはいとも容易く成立してしまう。後になって冷静に考えれば、社員旅行が個室であることも怪しさ270%だったし、そもそも支社の女に手をつければ、所在が明白なのだから逃げられない可能性を考えるべきだったのだが、社会人経験が皆無で下半身が滾りまくった状態では、脳みそに回す血液は完全に不足していたのだ。

開放的な真夏のビーチと布一枚の剥ぎ取れば即座にGO!という状態に、若い♂どもはドーパミンが出っぱなしである。海水浴もそこそこに、そそくさとツガイになって、どちらかの部屋に消えていった。もちろん全員が破廉恥な情念を持って参加したわけではない。純粋に旅行に来ているメンバーもいたし、彼らは普通に海の家で焼きそばを食っていたが、悪いことに私は純粋ではなかった。

ところでこういう場合、どのような女を選ぶのかというと、とにかくヤれる女である。所詮、その場しのぎの遊びだし一泊なのだから、競争率が高そうな、もしくはあまりにも奥手な女を選んだりすると焼きそばとカキ氷と酒を飲んで終わってしまい兼ねない。そこで私が目をつけたのが年上っぽくて(実際、5つくらい上だった)、派手目で、というか派手でケツの軽そうな女だった。何よりビキニからこぼれ落ちそうな巨乳が素晴らしかった。お互いにその気なのだから話は早い。私たちはビーチでビールを飲んでいたのだが、続きは「あたしの部屋で」ということになった。

女の部屋に入ってもすぐにコトが始まったわけではない。女はビキニの上にパーカーを羽織っただけで胸元は露出したままだったが、本当にビーチでの雑談の延長であるかのようにビールを重ねながら話し込んでいた。話してみると、サバサバしていて結構面白い女だった。特にお互いに映画ファンであることが分かり話は弾んだ。女はヘビーな映画ファンで、特撮モノにえらく詳しかった。子供の頃にダイレクトで見ていたモノから「人造人間キカイダー」などの生まれる前に流行ったモノまで見ていると言って、主題歌まで歌ってくれた。

1、2時間くらいそうしていただろうか。それはそれで楽しかったが、酒も程よく回ってきたし、股間もはち切れんばかりになっていた。それを察したように(私には見えたのだが)、女は「暑いよね。ちょっと恥ずかしいな」と言ってパーカーを脱いだのである。

女の細い肩を滑り落ちる動線がエロかった。布一枚になった巨乳がこぼれ落ちるように露になって、私はたまらず女に近づき、唇を重ね、ビキニの上から手のひらで乳首をまさぐった。女は全て承知しているといったように舌を絡め、海パンの中に手を差し込んできた。とにかく全てが熟れていて上手い。キスがスゴイ、ペニスを弄ぶ細い指先が気持ちいい、優しく口に含みながら舌先は別の生き物であるかのように亀頭や裏筋を這い回っていた。

そもそも、ほとんど同じ世代の小娘としか経験がないのである。中には場慣れた女もいたが、この百戦錬磨の女のテクの前にはまさに児戯に等しく、私は堪らず女の口中にぶちまけてしまった。女は上目遣いに私の顔を覗き込むと、瞳に笑みを浮かべながら、しばらくヒクつく私のモノや縮み上がった袋を舌と指でイジっていたが、全て飲み干してしまうと、「次はベットに行こう」と手を引いた。

当時は20代前半である。AV男優でもなければ、三十路にもなるとほとんど不可能な、抜かずの二発とか10分後回復という芸当が容易くできたのである。若いって素晴らしい! 私はバカ魔羅になって女とベッドに雪崩込んだ。ビキニの下を取り去ると女もスゴイことになっていて、それが興奮を更に助長させた。

右手の中指で掻き回すと、女は私に抱きつきながら、耳元で初心な少女のように、か細い声で啼いた。左手を女の背中に回し紐を解いた。身体を少し離しビキニのブラを剥ぎ取る。

アイヤーーーーーーーーー

そこにはグロテスクな生き物が! 胸はすでに張りを失ってだらしなく垂れ下がっていた。乳輪は大きく、一体となった乳首と共にどす黒く照り光っていた。そして先端には自我を主張するように形を保った楕円形の何かが!

ナニナニこれは一体何なの?

何で胸に段差があるの?

鏡餅なの?

クラゲなの? 

海だけにクラゲが祟ったのーーー?

もちろん、それが何であるかは瞬時に理解しているのだが、精神は納得を拒否していた。これからが本番なのだ。現実は楽しいものであらねばならぬ。クラゲは俺の先端であって、今から母なる深い海に潜るのだ。何で胸の先っぽにクラゲがいるの?

しかし、この胸を直視しながらゴールに辿り着くことができるのか、経験の浅い俺に! 欲望と理性の間で私の心身は悲鳴を上げていた。ここでフニャっては女を傷つけてしまうだけではない、俺の男としての沽券に関わるだろう。フニャってはならぬ。断じてならぬ。頑張れ、頑張るんだ、俺。若さで乗り切るんだ!

「見えなければ」と私は打算的に考えた。この女はフェラが無茶苦茶上手い。「君のも舐めたい」と69に持っていく。これでフニャは回避できるはすだ。問題はその後だ。バックが理想だが、はじめての相手にこれはハードすぎる。「ボク。バックが好きなんでちゅ」とかカワイク言って誤魔化せるか? いや非現実的だ。ならばいきり勃った状態のまま神速で挿入、ピストン運動を行い、生き急ぐ青春のようにフィニッシュするのだ! 行くぜ!!

逝ったぜ………。

根性で逝ったような書き方だが、実際は非常に良かったのだ。特別にキツいいわけでも緩いわけでもなかったが、締め方を知っているのだろう。ピッチャーが配球に緩急をつけるように締めと弛緩を繰り返す。女は目を瞑っていたわけだし、意識的であったとは思わないが、締めが生かさず殺さずならぬ「逝かさず殺さず」のタイミングであったことは事実で、私は突きながら、お釈迦様の掌で踊っている孫悟空のような戦慄をどこかで覚えていた。

そのまま眠ってしまったらしい。私は薄暗い中で目覚めた。夕食は18:30で食堂に集合ということになっていたので、部屋に備え付けてある時計を探してあたりを見回してみた。17:00。まだ時間はある。気怠さを感じていた。終わった後の体力の消耗もあるだろうが、エアコンの設定が寒すぎたせいもあるのかもしれない。私は腹ばいになり、先程まで頑張っていたマイ・ジョニーをシーツに押し付けながら伸びをした。

大変な女とヤってしまったのかもしれない、という後悔が頭を掠めた。あの整形が崩れてしまった胸を除けけば、総合的にはそれほど悪くないのかもしれないが手玉に取られた感がある。これは間違いないのだろう。女は・・・・・・横を見ると女も眠りについていた。女の寝顔というものはいつ見てもいいものだ。但し、それが可愛いければである。

ボエェー。 ノ)゜Д゜(ヽ

女は私が眠った後、ご丁寧に化粧を落として眠りについたらしい。そこにあった顔は先程まで見ていたモノと違っていた。頬あたりに斑点状になって浮かんでいるシミ、薄目が開かれたままの瞳は確実に大きさが違っている。眉はツルッとねーし、人によっては好きだろう派手顔は、のっぺりと貧相で、私は化粧というものの恐ろしさを生まれてはじめて味わった。キカイダ~、キカイダ~♪という女の歌が頭の中でリフレインしている。キカイダーって、お前が人造人間キカイダーだろうが!

私は目を離せず、しばらく顔を凝視していた。それに気づいたのか、女は瞼をゆっくりと開いて、焦点を合わせるように何度か瞬きをした。お目目の大きさってメイクでこんなに変わるんですかい! クールビューティーで魅力的だった瞳は、ただのつり目だった。

女はゆっくりと上半身を起こすと両腕を伸ばして私の頭を抱き抱えた。人造おっぱいが近づいてくる! イヤーーー(/ω\*) 私は声無き声で叫んだが身体も声帯も硬直したままだった。女は抱き抱えた頭の上から甘ったれた声で「おはよ」と言った。ブブブ、ぶっコロス!

主観的な時間では1時間くらい経ったと思われたが、恐らく抱き抱えられていたのは1分や2分であったと思う。女はやっと腕を離すと、枕元に置いてあった自分の携帯で時間を確認した。もう一度身体をベッドに沈め、今度は腕を私の下半身に伸ばし、ペニスに指を絡ませながら、「もう一回、する?」と聞いた。

ヤれるかー! と思ったのだが、ヤってしまった負い目もある。

「いや大丈夫。エアコンのせいか、ちょっとダルイんだ」と私は無難に返した。

女は「じゃあ、あたし、支度するからそのまま寝てて」と言った。「女の子って支度に時間がかかるから…」

イヤイヤイヤイヤ、お前だから時間がかかるんだろーよ。つか女の子って言うに事欠いてワレ! と心の中で叫ぶのだが、もちろん言葉にならない。女はベッドから降りると、だらしなく垂れ下がった変形乳を揺らしてバスルームに去っていった。もうゲンナリである。

まあいい。どうせこれっきりのことだ。食堂で「私たちヤりました!」と公言する人間もいないだろうし、後は酒を軽く飲んで、風邪気味だとでも言って自分の部屋に籠ってしまおう。明日には帰ってしまうし、私のセクションは支社と事業的な接点もない。携帯番号を教えるくらいは仕方ないが、最悪の場合、変えてしまえば済むし、200キロは離れているのだから、おいそれと会う約束もできない。

18:40。女の身支度はたっぷり1時間以上を擁し、私たちは遅れて食堂に行った。扉を開けると女はいきなり私の腕に絡みつき、皆に向かって、「遅れてごめんねー」と叫んだ。皆からは「ヒューヒュー」という野次や、特に支社の女たちからは「姉さん。オメデトー」などの声が舞う。私は思考停止の硬直状態である。ロボットのようにギコチナイ動きだったろう。勧められるがままに女の隣に座らせられ、幹事の「二人に乾杯~」とかいう、私に対しての宣戦布告とも取れる掛け声とともに夕食の幕は開いた。夕食の内容などほとんど覚えていない。ただ、一つ上の先輩が、「姉さんを幸せにしてやれよ」と言ったのを覚えている。私はいつかコイツに仕事で致命的な失敗を与えてやろうと心に誓った。

私は酒もそこそこに自室に引っ込むと告げると、”姉さん”は「さっきまで寝ていたんだけど、エアコンに当たりすぎたみたいなんだ」とか言い放った。ソノコトは公然とはいえ、まさかの「私たちヤりました!」宣言である。メガトンパンチを喰らわせたい衝動に駆られたが、もう言い返す気力もなかった。私は部屋に戻ると、暑い風呂に入り、慚愧の念にかられながら眠りについた。

週が明けて会社に行くと、私より遅く出社した先輩が脇目も振らずやってきて、「ヤったんだって? スゴかったろ、色々」と言った。それを見ていた上司は、意味深に私の肩をポンとひとつ叩いて去っていった。

どーゆーことなのだろうか。単純に解釈して、私と”姉さん”のことが話のネタになること自体は不思議とは言えない。だが、休日明けの朝に先輩や上司が知っているということは、旅行に行った中に報告者がいたということであり、また、報告する手順が決められていたということになる。

冷静に考えてみると、参加者は本社新入社員の男で構成されていて、上からの誘いがあったので参加したのだが部署に偏りがあった。新入社員の中に、数人の先輩が紛れ込んでいた。つまり、旅行への誘いは広く新入社員に対して行われたのではなく、部署単位でターゲットを定められて意図的に勧誘され、参加した先輩はお目付け役ということになる。何か陰謀臭い。

そこで私は昼時に「スゴかったろ、色々」と言った先輩を誘い出し問うてみた。別に内密の事柄ではなかったらしい。先輩は実に楽しげに内情を話してくれた。こういうわけだ。

もともとこの企画は私が所属していた部署と支社との間で始まった。当時の部長と支社長が同期であったことから実現したらしい。支社事務業勤務女性の平均年齢は22歳くらいであり、ほとんどが高卒である。本社事業勤務男性は全て大卒であるので年齢的にぴったり合う。支社側では20代後半くらいまでには辞めてほしいので、適齢期あたりになると「真面目に働いたご褒美」として費用会社持ちで送り込む。

本社新人は雀の涙程度の補助金支給だからほとんど自腹だが、「女と後腐れなく遊べる」ことを仄めかされスケベ心を触発される。人選はこの通過儀礼を超えてきた先輩達を中心に行われるが、選考基準は「軽そうな奴」ということだった。失礼な!

支社では25歳あたりを過ぎると「お局化」してしまうので、単にタダ旅行ということで参加する者もいるが、婚活で参加する人間も結構いる。事実社内結婚が相当数誕生していた。そのような会社の思惑は概ね効果を上げていたが、回を重ねるごとに”姉さん”が名物女になってしまった。

“姉さん”については謎が多かった。入社が二十歳過ぎであること。もちろん短大や専門学校卒もいるのだが、そもそもケバさは最初からしく社風に合わない。

「某役員の親戚筋に当たり、中高生の頃から家出を繰り返し風俗に勤めていたが、改心したため地元の支社にコネ入社させた」とか「ヤーさんの女だったが、就職先を紹介されるという形でお払い箱になった」とか「当時の人事部長に枕営業をかけて採用された」とか、様々な噂があったが、どれも噂の領域を出なかった。但し、普通の女は入れパイをしないだろうし、外見からヤンキー系であろうということ。また、お局化のために「本気で」結婚相手を探しているだろうことだけはハッキリしていた。

“姉さん”は旅行の常連であり、その度に誰かを「食っちゃう」ので、「今年は誰が犠牲になるか」というのが上司以下の体のいい賭け事になっていた。競馬のように一覧が作られ、”姉さん”から連れ去られた時点で、お目付け役の先輩から元締めに連絡が入っていたらしい。つまり私のジョニーが”姉さん”から可愛がられていた頃には既に、電話の向こうでは勝った負けたの乱痴気騒ぎが演じられていたのだ。

「ちなみにお前は本命、レート1.2倍だから」と先輩は言った。「予想通りでちっとも面白くねー」

面白くないのは同感だったが、「何てぇ会社だ」と私は思った。しかし、予想通りに嵌った私としては、それよりも重要なことがあった。

「えーと……するとですね、賭け云々は置いといて、”姉さん”は本気で僕との結婚を狙っている、ということになるんですかね?」

「そりゃそうだろー。その気がなくてヤらせないだろ、普通」

私のこめかみから一筋の冷や汗が流れ落ちた。心拍は200を突破していたかもしれない。

「えーと……ですね。先輩の話からすると、僕以前にもヤってしまった方がいらっしゃると思うんですが、その方々はどーしたんでしょう?」

「いや、お前も男だから責任を取らなくちゃ」

「いやいやいやいや、勘弁してください。というか参考のために教えてください」

「どうしても知りたい?」

コクコク(頷く)

「みんな辞めたな」

どっひゃー。

入社してまだ半年満たないのである。絶対需要があり待遇も良く、そこそこテキトーにこなしていても年功序列で出世してしまう安定会社員から無職に転落することは22歳の若者にとっては厳しい。強烈なダブルバインドに陥った気分だったが、反面、まだ高を括っていたところもあった。

そもそも誰かと恋愛をするには、肌を重ね合わせる時間と距離が必要なのである。この先輩の情報はイマイチ信用できないし、毎年、”姉さん”によって退職者が出るのであれば問題になるはずだ。「みんな辞めた」など有り得ない。要は私の毅然とした態度である。

甘かった。地獄はここから始まるのである。

とにかく毎日電話がある。電話の後にはメールが来る。実際、海から戻ったその日から電話とメール攻勢は始まっていたのだが、テキトーに相槌を打っていたのだ。「次はいつ会う?」という、「会える」ではない「会う」という断定にも「仕事が始まってみないとね」とか、曖昧な話をしていた。

これがいけない。はっきりと「会うつもりはない」「付き合うつもりはない」と告げるべきなのだ。「遊びだったのね」とか「ヤリ逃げかよ」とか「鬼悪魔」とか「スケベ」とか「短小」とか「早漏」とか「下手くそ」とか言われるのは、この際しょーがない。

支社女性陣のネットワークがあるかどうかは分からなかったが、そういったもので悪い噂が立てられるのも覚悟の上だ。どうせ人の噂も75日。来年は私が旅行の主催スタッフになって、新入社員の誰かに押し付けてしまおう。

だが、私はまだ”姉さん”が数段上を行く熟練者であることを理解していなかった。恐らく私の「決意を告げる硬さ」を声で感じ取っていたのだろう。頭の中では「次はいつ会う?」といった台詞に呼応するようにシュミレートしていたのだが、その言葉が出てくるのを身構えている時に限って他愛もない雑談しか話さない。

話題を強引に変え、「毎日の電話は困る」とか「付き合うつもりはない」といったニュアンスを告げても、「大丈夫だよ。気にしないから」とかいう脈絡のない言葉で躱されてしまう。そんなやり取りがしばらく続いたが、埒があかないと判断した私は、電話もメールも無視するという暴挙に出た。

確かに私個人へのダイレクトラインは携帯とメールのみであるが、世の中には会社の電話というのも存在する。”姉さん”は会社の電話を私用に使うという私を上回る暴挙で対応した。「愛しの姉さんから電話だよー」という先輩の無慈悲な声が部署内に響き渡る。仕方ないので携帯で話すことになる。堂々巡りであるが、次第に私の打つ手は狭められていった。

私の最大最後の防波堤は多忙さを装うことだったが、恐ろしいことに”姉さん”は私の社内スケジュールを完璧に把握していた。内通者がいる。面白がって”姉さん”に手を貸している者がいるのだ。

それは先輩であろうことは察しがついた。とはいうものの、先輩のみであるかとなると見当もつかなかった。下手をすると部署ぐるみということも十分にあり得る。だが本質的な問題はそこではない。どうやって”姉さん”を振り切るかということだ。”姉さん”との未来をどのようにも描けない。ここで根性を出さずに思わず流されて”姉さん”と結婚でもすることになれば、私は口かバックか完全なる暗闇でしか逝けない体質になってしまう。ヤバ過ぎるぅ。 (´д゜`ll)

とにかく重要なのは「会わない」ことだ。これまでのやり取りで、駆け引きでは”姉さん”に敵わないことは分かっている。考えた。私のスケジュールは知られているのだから、それを逆手に取らぬ法はない。本当に忙しくなれば良いのだ。先ずは「物理的に会う可能性を潰す」ことが先決だろう。私は残業、休日出勤を積極的に願い出た。完全に労働基準法違反だが、本当は忙しい会社なのだ。仕事は幾らでもあった。「点数稼ぎ」だの「”姉さん”との結婚資金稼ぎ」だの散々揶揄されたが、こっちは人生がかかっている。真剣なのだ。私に結婚願望などなかったし、するにしても年下の可愛い女の子が良い。おっぱいの先端がクラゲに乗っ取られた、指と口で男を瞬殺するような正体不明のキカイダーは願い下げである。

私は仕事の鬼と化した。偽らず疲れていた。悪友たちとの「いつものクラブでナンパ」をする体力も残されていなかった。だがそれは”姉さん”に対する、自然なそっけない態度に繋がっていたようだ。「最近冷たい(温かくした記憶もないが)」などという言葉を吐かれ、次第に電話も毎日は来なくなり、メールの内容も差し障りないものになっていった。死闘二ヶ月。ようやく暗闇の先に仄かな灯りが見え始めた。

その日は少しばかり肌寒さを感じることのできる初秋の土曜日だった。18:00。いつも通り休日出勤を終えて私は帰途についた。前週に会社の展示会があったため、実に13日間休みなしに働き詰めであり、心身ともにヘロヘロだった。住んでいたマンションの最寄駅に着くと季節はずれの驟雨が襲ったが、50%くらいしか認識できず、しばらく呆然と立ち尽くすほど疲労は極限に達していた。

ようやく休みが来る。私は我に返るとそのまま歩き出した。雨は止むことなく降っていたが、一刻も早く部屋に帰りたかった。部屋までは徒歩5分だ。体が冷えきる前には辿り着くことができる。

目を疑った。マンションの庇の下には”姉さん”が!

ン・ジャジャジャジャーン♪

交響曲第5番「運命」が高らかに鳴り響いた。”姉さん”は私の姿を認めると小走りに駆け寄ってきて、「来ちゃった」と言った。

織田信長の合戦を詳細に文献に照らし合わせていくと、多くの場合、天候に恵まれたことが分かるらしい。代表格が桶狭間の合戦であり、暴風雨が奇襲を成功させた。時として歴史も人生も、玄妙なる自然の営みによって左右される。

もし、その日が満天の星が輝く晴天であったならば、「いい加減にしろやー。このメス豚がぁ」とかキレて、”姉さん”を追い返すことができたかもしれない。しかし雨に打たれ、ずぶ濡れになった女を追い返せるほど、まだ私は鬼畜ではなかった。

私は”姉さん”を部屋に招き入れた。すぐにでも眠りたいのが本音だったが、最低限、服が乾く間は付き合う必要がある。近くのコインランドリーの乾燥機にぶち込んで約一時間。あと一時間の辛抱だ。

私は”姉さん”にその旨を告げ、シャワーを浴びて私のスエットに着替えることを勧めた。”姉さん”が服を脱いでいる間、私は聞かねばならないことを聞いた。「誰が私の住所を教えたのか」そして「どうして断りもなくやってきたのか」である。

教えたのは先輩だった。”姉さん”が部署に電話したとき、先輩は私のハードワークに関して、「何か目的があってお金を貯めている」ようだが、「体を壊さないか心配」であって、「できるなら行って励ましてやれよ」と言ったらしい。

逆効果じゃねーか!

つーか、これで敵はハッキリした。あの糞バカを倒さねばならぬ。奴は人の努力を面白がって滅茶苦茶にしているだけなのだ。

私が怒りに打ち震えていると、裸になった”姉さん”が擦り寄ってきて、「風邪ひいちゃうよ。君も脱いで。一緒にシャワーを浴びようよ」と言いながらズボンのチャックを下ろし、細い指をペニスに絡ませてきた。

あっふん♪

逆手にした右手でペニスを包み込み優しくストロークしながら、中指で裏スジをなぞる。瞬間、私の袋は縮み上がり、ペニスは勢い良く勃起した。そう「疲れ魔羅」である! 疲れが溜まった身体は生命維持の危険性を感じ、子孫を残すために勃起しやすくなる。更に悪いことが重なった。仕事の鬼と化すために、私は約二ヶ月、ほとんど女遊びをしていなかったのだ。疲労によって抑圧されていた性欲が、キカイダーであっても、一応女である”姉さん”に触れられることで発動した。

“姉さん”は強烈な勃起をしているのを確認するように、ギュッと強く握り締めると、そのまま両膝をついてペニスを口に含んだ。

嫌、ヤメテ、止めないで。そのまま優しく、あっふん♪ ヤメテヤメテ止めないで。ああーっ、男って弱いものなのねー。

ドッキューーン!

“姉さん”は「んっ」と呟きながら、少し眉間に皺を寄せたが、そのまま左右の指で袋とペニスを刺激し続けた。亀頭は残っているザーメンを吸い出すように、口で強く吸引されていた。私の股の付け根は痛いほどの快感が走り、太腿には微弱な痙攣を生じた。

「いっぱい出たよ」と”姉さん”は喉を鳴らして飲み干した。そして今度は舌先で亀頭を舐め回しながら、「これ、挿れて」と言った。

私はズブ寝れの服を脱ぎ、”姉さん”をベットの淵に手を付かせて四つん這いにすると、バックから鬼突きをした。「スゴイよ」「気持ちいいよ」と”姉さんは”言ったが、私は「やかましいわ!」と心で罵りながらピストン運動を続けていた。それでも、様々な感情──それは主に怒りではあったが──がマンコを突き上げる度に快感になって氷解していく

私は息を切らせながら果て、そのままベッドに倒れ込んだ。色々と、もうどうでも良かった。ただ、泥のように眠りたかったのだ。

目覚めたのは昼過ぎだった。傍らには、やはりご丁寧に化粧を落とした”姉さん”の顔が横たわっている。薄暗い中ではなく、日中の陽光が差し込む中で見る”姉さん”のスッピンは、増して凄まじかった。「昭和枯れすすき」が脳内に鳴り響いた。

やっちゃったのねん。あっふん♪ズッコンと、やっちゃったのねん。嗚呼、眺望絶佳の崖っぷち。清水寺からダイビング。青木の樹海は目の前に~~。

おかしなフレーズが頭を駆け巡る。この難関をどう越えていけるのか。人生22年の中で最大のピンチが今ここに! 状況はどうあれ、「なぐさめるために」やってきた”姉さん”を私は迎え入れたことになってしまった。傍から見れば、これで私と”姉さん”は出来上がったことになるだろう。自分のことでなければ私だってそう思う。

どのくらい煩悶していただろうか。気がつくと、すでに目を覚ましていた”姉さん”が私の顔を覗き込んでいた。

「あのね」と”姉さん”は言った。「そんなに頑張らなくても大丈夫だよ。あたし、ちゃんと待ってるから」

ゴゴゴゴゴ……と、私の中で、何かが音を立てて崩れ落ちるのが分かった。もうやってられない。私は辞表を書き、翌日、上司に叩きつけた。理由を説明しろ、と言うので、そんなことは、あなた方が一番良く分かっている筈だ。下の者の不幸を面白おかしく助長して陥れるような人間たちとは信頼関係を築けない。これはもう、私を追い込むための嫌がらせ以外の何物でもない。であれば、望み通り、辞めさせて頂く、と言った。上司は少し苦笑いをしていたが、「分かった」と言って、私の辞表を受理した。

私の辞職は、社内の上層部でちょっとした物議を醸した。この会社は安定成長にかまけて、社員は公務員のようにやる気がない。仕事は山ほどあるのに、特に雑用が蓄積して業務は全体的に遅れがちだった。面白くはないが誰でもできる仕事を誰もやらないという倦怠病に陥っていたのだ。それを私が意図せずにではあるが片付けてしまったので、上層部では私への評価が上がっていたらしい。

常務以下の役員に呼び出され、理由を聴衆する場が設けられた。私はこれ幸いと事の経緯を説明し、陥れた者の名を指摘して、個人情報の私個人に対する”悪ふざけのための”提供と、それに嬉々として加担する部署内のモラルのなさを非難した。原因の一端が私のスケベ心であることはもちろん棚上げして、ことさら、”信頼関係の崩壊”を強調し、「もう辞める他はない」と言葉を結んだ。

上司と先輩には上からかなり手厳しい”お叱り”があったらしい。手のひらを返したように低姿勢になり遺留に訪れた。ささやかな復讐は副産物的に成功した。ざまあみろだが、実はそんなことはどうでも良かった。問題は”姉さん”なのである。攻め時と判断したのだろう。”姉さん”の猛攻は止まらなかった。同棲するような話まで出ていたのだ。恐らくもう誰にも止められないだろう。

私はすでに引越し先を決めていた。高待遇と過労死寸前のハードワークのおかげで、引越し代くらいは十分に貯まっていたのだ。代わりの仕事はあるだろうが、”姉さん”に引っ付かれては人生が終わる。仕事も大事だが、人生と秤にかければ、人生の方が重いに決まっている。

こうして私は無職になったが、心は晴れやかだった。私は文字通り「憑物が落ちた」のである。私は友人に電話かけた。「今日、クラブにナンパしに行こうぜ」

実は普通に私も使っていたりする(笑)。登録しといて損はなし 出会いが見つかる安心の老舗優良マッチングサイト PCMAX

第2話:豊胸女と、ある新入社員の悲劇

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