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    第3話:性の営みは密室の習慣である

    2017年6月18日

2017年6月18日

第3話:性の営みは密室の習慣である

世の中には”究極の習慣”というものが存在する。例えばトイレがそうだ。用を足すのは密室で行われるし、その習慣については例外的な事例でもなければ他人に知られることもなく、故に「変わってるね」とアドバイスを受けることもない。トイレットペーパーを三角に折るのはまだかわいい。鶴を折って流す奴。全裸にならないと気がすまない奴。儀式のようにおかしな踊りをする奴。私が聞いたことがあるのはこれくらいだが、もっと変態チックな習慣を持つ奴もいるのだと思う。

そういう意味で言えばセックスもそうだろう。もっとも”原則的には”2人でするものだから、仮に片方がアブノーマルなセックスしか知らないとしても、片方がノーマルであればノーマル側に引っ張られる可能性が高く、ずっとアブノーマルでいられるかというとなかなか難しい。だがもちろん、アブノーマルしか知らない人間がノーマルに出会った時点では、アブノーマルがノーマルだと思っているわけで、それによって人生の中で言えば”刹那的”とも言える瞬間に悲喜劇が生まれるものだ。

彼女は小さな顔とシャープな顎と大きな目が特徴で、童顔ではあったが、どこかラテン系ハーフのような雰囲気を醸しており、地黒でミニマムでむちむちで爆乳でアニメ声だった。「豆タンク」というと言葉が悪いが、他に適当な言葉がないというか、100人にそう言えば100人が納得する体型であったものの、見た目の重さとは裏腹なフットワークの軽さに「黒ウサギ」という渾名を授けられてた。

私が彼女と会ったのは大学2回生の春。彼女は某女子大の新入生だったが、サークルの学外交流というのだろうか、年に数回、イベントを一緒にやることになっており、年間スケジュールの手始めはお約束だが新歓コンパから始まる。そこで会ったのだ。こちらのサークルの女子には面白くない話だろうが、まあ男子にしてみれば、女子大という甘美な響きと、たとえ別れたとしても内部調達にありがちなバツの悪さが回避できるというメリットがある。物色するのは当然のことで、その爆乳故に彼女を狙った男も多かったが、身持ちが硬くことごとく玉砕していた。

何でも彼女には結構年上の彼氏がいるということで、男子の間ではあの爆乳バイズリで”パパ”を獲得したのだとか噂になっていた。ある意味、それくらい目立つキャラということだろうが、多分に見たこともない”結構年上の男”に対するやっかみが入ってたのだろうと推測する。私としても爆乳は非常に魅力的であったが、当時、寝る女もいたことからそれほどガッついていなかったと思う。そのせいか、何となく気の合う話し相手のような感じで3年ほど交流が続いた。

あれは4回生の6月だった。梅雨を象徴するような蒸し暑い日に私は彼女から呑みの誘いを受けた。これは非常に珍しいことで、私が記憶する限り3年の交流の中で2人きりで呑みに行ったことは2回しかない。それも呑み会の2次会的な”ついで”であって、呑み自体を目的として会ったことは一度もない。18:00。私たちはキリンシティで落ち合い乾杯をした。

「どうかしたのか?」私は聞いた。「呑みに誘ってくれるなんて始めてじゃないか」

彼女は特に理由を示さず、「何となく話をしたくなって…」と言った。

世に「若者の悩みの90%は女で解決し、大人の悩みの90%は金で解決する」という名言があるが、女子大生が、話をしたくなって、仲の良い男を呼び出す、ならば、その理由はほぼ100%恋愛絡みであり、彼女の場合は例の”結構年上の彼氏”と別れたとか深刻な喧嘩をしたあたりが理由であることは容易に察しがついたが、深くは聞かなかった。それは彼女自身の問題であるし、私に対して、例えば愚痴を零すなどをして慰めを求めるなら、その選択権は彼女に与えられるべきだ。彼女のことを思えばそういうことになる。

などという話ではない。1話、2話にも書いた通り、私はそんな殊勝な生き物ではない。考えていたことは、「もしかしたら落とせんじゃね?爆乳モミモミパフパフじゃね?」だ(笑)。

2時間ほど私たちはキリンシティで夕食をしつつビールを2杯づつ飲んで店を後にした。夕食の間、彼女は彼氏とのトラブルを婉曲的に口にした。どのようなトラブルかを明言することはなかったが、それが深刻な事態であることは見当がついた。私は駅の券売機に行き、私の住居の最寄り駅までの切符を2枚買って「来る?」と聞くと、彼女は頷いて小さな紅葉のような手で切符を受け取った。

蛇足を承知で言っておくが、こういう時、SUICAで”ピッ”は駄目だ。誘っているという明確な意思表示が必要で、それにはやっぱり切符なのだ。

私は彼女の手を引いて部屋に導き入れ、ベッドの前で抱きしめると唇を重ねた。彼女の薄い唇は一瞬戸惑ったように硬直したが、すぐに舌を受け入れ、吐息と紛うような小さな小さな喘ぎ声を立てた。Tシャツの下に手を滑り込ませブラのホックを外す。前に手のひらを回し、ずっしりとした片手には収まりきらない乳房を撫でながら人差し指で乳首を刺激する。乳首は硬く勃起し、大きな乳輪が収斂して皺状になっているのが分かる。彼女が大きく息を吐きつつしがみついてきたので、私は耳元でシャワーを浴びるか問うた。

「黒ウサギ」の渾名の通り、彼女の肌はまるでサロンで程よく焼いたかのように満遍なくくすみひとつなく小麦色だったし、むちむちではあったが弛みひとつなく肌は絹のように滑らかだった。豊満な乳房は重力に耐え切れず少しばかり垂れ気味だったが、色づき収縮した乳首と乳輪は体色に比べて薄いと言えるほどの褐色で、顔の繊細さに対してアンバランスで暴力的なスタイルはチンポをおっ勃てるには十分だった。

勢い良く放出させたシャワーを2人で浴びながら右手を彼女の股間に滑り込ませ、肉の合間に中指を埋めるとヌルヌルとした液体が纏わりついた。そのままクリトリスにスライドさせて指先で愛撫すると、身体を強張らせながら両腕で私の左腕を掴み、チェーン・ストークスのように規則性のある不規則な喘ぎを繰り返した。愛撫を止め、ちんぽを握らせると、ぎこちない手つきで上下運動をしながら覗き込むように潤んだ瞳を私に向ける。普段の活発で明るい性格が嘘のように、支えを求めるような表情が愛おしく、私たちはまた舌を絡めた。

彼女は理想的な美まんの持ち主で、小陰唇は小さく、脚を広げさせると大き目のクリトリスも膣口も露になる。会淫からなぞるように何度か上下に舌を這わせ、クリトリスを刺激しながら左手で爆乳を揉みしだくと普段の高いアニメ声から更に声質を高くして淫靡な声を絞り出した。右手の中指を膣に浅く挿入して掻き回すと彼女は悲鳴にも似た声を上げ、私の頭を押すようにしながら「ヤメテ。もうヤメテ」と言った。

「どうした?」と私は聞いた。

「イっちゃいそうなの」彼女は答える。

「いいよ。イっちゃえよ」

「やだやだ。怖いもん」

私は愛撫を止めた。女のタイプも様々で、何度もイきまくる”ぱなし”の女もいれば、男のようにイってしまうと急にくすぐったくなる女もいる。イってしまうと終わってしまうから、愛撫は止めて挿れて欲しい、とこれなら分かる。相手が処女で初挿入するときに「怖い」ならもちろん分かる。しかし、”結構年上の彼氏”と長く付き合った非処女の「イくのが怖い」という言葉は始めて聞いた。

「怖いってどうして?」

「イったことがないから。おかしくなっちゃいそうで…」

イったことがない、というのもそれはそれで不幸なことだと思ったし、そういう女の初イキにも興味があったが、頑なな嫌がり方が尋常ではなかった。何かのトラウマがあるのかもしれないが、とりあえずちんぽは彼女のカウンセリングよりも自分のカウンセリングを求めていたので、今度は私のをしゃぶってくれるように言った。

率直な感想を言えば、彼女のテクは児戯に等しかった。小さな紅葉のような手のひらは湿っていて、竿に張り付くような感触は良かったが、ぎこちなく上下を繰り返すだけだったし、フェラチオも同様だった。パイズリも挟むことはしてくれるのだが動かし方を知らない。小さな薄い唇はカリを程よく刺激し、爆乳はちんぽを十分に包み込むだけのボリュームがあって、持っているモノは非常に優れているのに使った経験が浅すぎるのは明白だった。

『”結構年上の彼氏”というのは……』私は心の中で呟いた。『一体、彼女と何をしていたんだ……』

正常位で挿入すると中は熱く、決して締め付けが強いというのではないが、身長に対して膣が深いのだろう。ピストンの過程で亀頭に様々な感触を与えてくれた。クリ派、中派という分類をすれば、彼女は確実に中派で、高音の喘ぎは大きく小刻みになり、その反応は決して経験の浅いソレではなかった。要するに”結構年上の彼氏”というのは少なくともセックスにおいて非常に自己中の性格だったのだろう。回数は多かったのかもしれないが、前戯もそこそこに突っ込むことばかりに熱心なタイプだ。

彼女の股座はむちむち女特有の弾力とフィット感に優れていて、爆乳を掴んだ両手は柔らかな脂肪に包まれている。小麦色の肌はうっすらと汗ばみ、エキゾが入った童顔は”女”の歪みを呈している。恐らく長い間、ひとりの男に独占されていた痴態を、今、私が見ていることを思うと、この上ない興奮を覚えた。

「もう…イっていい?」と聞くと、彼女は薄く目を開いて「いいよ。イって、イって」と途切れ途切れに言葉を返した。やはり外に出すならばこの爆乳にぶっ掛けたい。私はちんぽをまんこから引き抜くと、半立ちになり下半身を胸部めがけてせり出した。

その時、思いがけないことが起こった。

彼女は素早く上半身を起こすと、いきなり右手でちんぽを掴み自分の口元に引き寄せた。私はちんぽを先頭に逆”くの字”という情けない格好で彼女の口元に勢い良く射精する形になり、第一波を顔にぶちまけたのだが、すかさず彼女は私のちんぽを口に含むと、小さな紅葉のような左手で袋を優しく刺激しながら、右手で竿をしごきつつ、頬をへこませて深く吸引し始める。激痛にも似た快感が全身を襲う。

あっふーん、うっふーん。こここここ、こんなのハジメテ………(*・・*)ポッ

彼女はちんぽから手と口を離すと喉を鳴らして飲み込み、口の周りについたザーメンをすくって指を舐めるという仕草を繰り返す。その姿はAVの痴女物を見るよりも遥かにエロチックで、遥かに狂気じみていて、私の背筋にかすかな戦慄が走った。

この女は、何なんだろう?

男と女の場合、寝ることによって精神的な距離感が縮まるのは良くあることだが、彼女の場合も例外ではなく、今日、私を飲みに誘った理由をぽつぽつと話しはじめた。

彼女に”結構年上の彼氏”がいたというのは事実だった。彼女の実家は山梨県にあり大学進学のために上京。入学するまでの時間を某上場企業の短期アルバイトをして過ごした。彼氏と出会ったのはその時であり、一回りほど上だったが、男に免疫のない彼女は優しいエスコートに敢えなく陥落し、上京1週間でバージンを捧げた。

彼女は一途に彼氏を愛し、卒業後は当然のこととして結婚することを考えていたが、彼氏が選んだのは彼女ではなかった。彼女がショックだったのは、彼氏が彼女を選ばなかったという事実よりも、他にも女がいたという事実であったが、問い質してみると他にも”女たち”がいたということであり、彼氏が選んだのはスレンダーで清楚風の”自分とは正反対”の女だった。

「全然気づかなかったの」と彼女は言った。「あたしの他に2人も3人も付き合っていた人がいたなんて全然分からなかった」

彼氏は別れ際に、「俺って本当はスレンダーな女が好みなんだ」と言い放ち”相手”の写真を見せたという。このあたりに彼氏という男の、冷酷でサディスティックな性格を窺い知ることができたが、普段は一汁三菜の和食を好む男でも、時には血の滴るサーロインステーキを欲するといった心情は理解できる。そして恐らく友人あたりに、彼女のことを、世間知らずの女子大生をキープしていて、俺がはじめての男で、必ずフィニッシュにはザーメンを飲ませるように”仕込んだ”とか言っていることも容易に見当がついた。

彼女のこのギャップのあるプレイ、つまり射精を口で受けザーメンを吸いだす”以外”のテクの低さは、むちむちにも爆乳にも興味のない男の性欲処理と調教によって”作られた”性癖であることを知った。このことを彼女に知らせるべきであろうとは思う。だが、様々な裏切りによるショックで打ちのめされている彼女に、追い討ちをかけるように「その性癖は異常である」と”今”告げるべきか、ということを考えると判断は難しかった。

取り合えずだ。いずれにしてもあの快感をもっと味わいたい。私も”彼氏”に負ける劣らず鬼畜だとは思ったが、仮に彼女に真実を告げれば、吸い出しスーパーテクを駆使してくれることはなくなるだろう。経験上、ザーメンを喜んで飲んでくれる女など会ったことはない。

私は顛末を話し終え、少し涙ぐんでいる彼女を引き寄せた。手のひらで乳房を弄びながら彼女の首筋に舌を這わせると、柔らかな乳首はたちまち硬く勃起した。私は上体を起こし、彼女の手を私のちんぽに誘導しながら、乳房と乳首の愛撫を続ける。意外と手荒に扱われるのが好みらしく、五指を立てるようにして少し乱暴に揉みしだくと喘ぎ声は一際大きくなった。彼女を上に乗せ69の体勢に持っていく。両手でまんこを開くと、すでに滴るほど愛液で濡れていた。

おっぱいの大きい女は感度が低い、というのは都市伝説みたいなもので、実際は「人による」のだが、彼女は確実に感じやすく濡れやすく、どう見ても”ぱなし”の体質だと思った。クリトリスを執拗に刺激すると、再び「ヤメテ、ヤメテ」と言ったが、私は両腕で尻を固定してそのまま責め続けた。悲鳴にも似た短い叫びと共に彼女の身体は上下し体中から汗が吹き出す。簡単にイクじゃないか。”彼氏”は本当に彼女の穴にしか興味がなかったのだろう。

彼女を降ろすと仰向けにして股を開かせ、更にクリトリスを舌で転がす。彼女は私の頭を両手で掴んだ。それは、拒否し引き離そうとするようでもあったし、貪り求めているようでもあった。中指を深く挿入し、第一関節を折り曲げながら擦るようにGスポットを刺激すると、彼女短く甲高い叫び声を上げ、ほんの少しの潮を吹いた。

ぐったりとした両手を引いて上体を起き上がらせ口元にちんぽを差し出すと、彼女は放心した表情のままにフェラチオをはじめた。上下運動の緩急、カリや裏筋の舐め方、竿をしごきつつの玉責めなどを指示すると、彼女は従順に行為に及ぶ。そう、これは調教なのだ。潜在的なM体質というか、そういう”従順さ”が異様に似合う女がいる。彼女はまさにそのタイプで、乱れた髪を直そうともせず、荒い息遣いのまま必死に行為を”繰り返す”姿は、未来に必ず生まれるだろう真っ新なセクサロイドに仕込むような、甘美な、そして一種の嗜虐的な感情を私に与えた。

そしてパイズリを”命じる”。爆乳でちんぽを挟み、唾を垂らし、指先を竿に引っ掛けるようにして肉で扱くように命じる。パイズリそれ自体は気持ちいだけだ。それなりのスキルを持つ女がローションなどの小物を使って射精に導けるものだが、調教という興奮に私のちんぽも過敏になっていたのだろう。「イきそうだ」と彼女に告げると、例のスーパーテクでザーメンを吸い出してくれた。

個人的な感想でしかないが、感度が高い女は”鉄まん”であることが多いように思う。正常位で、騎乗位で、バックで、彼女は私のモノを際限なく受け入れたし、絡むたびに──最後の一滴まで舐め取るように、カリ周りと尿道を舌先で”お掃除”するまでに──彼女のテクニックは上達していった。

結局、私と彼女は1、2時間程度の仮眠と食事を取りつつ、翌日の昼までセックスを続けた。私のザーメンもかなり薄くなっていたのだろう。4回目が終わった時、彼女は「飲みやすくなった」と笑いながら言った。

彼女と私の関係が、この日を境に大きく変化したわけではなかった。それは彼女が私に対して彼氏というポジションを求めなかったからだ。理由は彼女が望んでいなかったからかもしれないし、私の言葉を待っていたのかもしれなかったが、私は多分に「あいつは女に節操がない」という噂が原因なのではないかと推測していた。失礼な話だ。私は性的に些か他人様より解放されているだけだ。

頻度はおおよそ2週間に1回くらいだろうか。どちらからともなく連絡を取り、デートをしたり、食事に行ったり、呑みに行ったりして私の部屋に一緒に戻ってお泊りセックスをする。彼女は実家の強い意向で3回生になっても寮暮らしだったが、規則は緩めで届けを出せば外泊を認めてくれる。ただ、回数が多ければそれなりに目立つことも事実らしい。境界線がだいたい2週間ということだが、それ以外には(つまり普通の恋人のように)合うことはなかった。

彼女の”性長”は凄まじく早かった。それは子供が様々な事に興味もって吸収していくようなもので、一緒にAVを見て、オトナのおもちゃをネットで注文して色々と試したりした。ピンローや電マは当たり前だが、例えば結束バンドで身体を固定し目隠しをしてハメるとか、ディルドを床に固定してズボズボとオナりながらフェラ抜きしてくれたり(もっともこれは「本物の方がいい」と言った)、AVっぽい行為を片っ端からやってみた。彼女のフェラチオには磨きがかかり、ノーハンドでイかせる荒業もマスターして、文字通り”ヤりまくった”およそ半年は”刺激のある性活”という日々であったと思う。

しかしそんな”性活”は必ず終わりが来る。恋人同士という認識をお互いが確認していない、というのはそういうことだから、それ自体は構わない。私も彼女も互いに束縛する権利を求めなかった。それだけだ。フェードアウトしていくのは、むしろ良いことなのかもしれない。ただ、この話には後日談がある。

私と彼女は半年を過ぎたあたりから徐々に疎遠になっていった。単純に言えば、私の誘いが断られることが多くなり、彼女からの誘いがなくなり、自動的に私も誘わなくなり、合うことがなくなったということだ。その日は、お互いの連絡が途切れてひと月くらい経った頃だと思う。おおよそ”半年目”から起算して、それから3ヶ月弱経過した頃といったところだろうか。彼女から唐突に電話があり、部屋に行っていいかと尋ねるので、私は「もちろん構わない」と答えた。

久しぶりに訪ねてきた彼女の表情にはいつもの屈託のない明るさはなく、端的に表現すれば”怒っている顔”であったが、そればかりではない憂いというか緊張というか、複雑な感情を湛えているように見えた。少なくともヤりに来た顔ではない。私はどうしたのか問うてみたが、彼女は押し黙ったまましばらく微動だにもしなかった。

「聞きにくいんだけど……」およそ3分の沈黙の後に彼女は口を開いた。「あたしって変わってるのかな?」

「いや特に変わっているとは思わない」私は答えた。「むしろ明るくて好かれる性格なんじゃないか?」

「そうじゃなくて。性格とかじゃなくて……」

さっぱり分からない。

「何の話?」私は聞き返した。

「アレが変わっているのかな?」

「アレ?」

「……エッチ」

もちろん盛大に変わっているが、私が「少しね」と言葉を濁して答えると、彼女は深くため息をついてテーブルの上にうつ伏した。

「あたしね」彼女はそのままの体勢で話し始めた。「彼氏ができたんだ」

「それは思っていたよ。誘いに乗ってくれなかったしね」

「うん。でも振られちゃったんだ。風俗で働いていると疑われちゃってさ。すごく好きだったのに……」

「まあ、アレをやれば、そう思われても仕方ないかな」

「何となく分かるような気がするんだけど教えて。アレって具体的に何?」

「普通の女は男がイくときに咥えて飲んでくれたりしない。扱いてくれる女はいるけど、それだって多くはない。お前のフェラやパイズリは最早プロ並みだし、テクが直撃したら確かにそう疑うかもな。というか、疑うな」

「でも、あたしはそのやり方しか知らないし、あなたも教えてくれなかった」

その言い方には、私に対する非難が込められているように感じられたが、私のせいか? いや、私のせいであるか。確かに最初はその異常な性癖を告げようとは思っていた。だが、セックスを重ねていく中で、互いの呼吸でそういうプレイを選択したのではなかったか。私はそう話した。

「違う」と彼女は言った。「それが普通だと思ってたの!」

そんなわけあるか。幾ら何だってディルドでオナりながらフェラ抜きとか普通と思える方がどうかしている。

「あたし、まだ2人しか経験がなかったのに」

まあ……確かにそれは気の毒だ。捕まった最初の男が悪かった。次の男(私ですが)も悪いと言うと少し語弊があると思うが、彼女にしてみれば悪かったのだろう。しかしそんなことを言っても始まらない。彼女は識ってしまった──それも積極的に識ってしまったのだし、その事実は変えられない。だが合理的な方法がひとつある。もちろんそれを彼女が受け入れる可能性はほとんどないし、私的には親切心以外の何者でもないのだが、かなりの高確率で伝わることはないだろう。

「何なら」私は言った。「普通のセックスというのをやってみるか?」

彼女は頭をもたげて私を睨み付けると「バカ!」と言った。

『やっぱり』私は心の中で呟いた。

「ボケ!」

『甘んじて認めてもいい』

「スケベ!」

『それは認める』

「ヘンタイ!」

『それはお互い様だと思うが』

「ハゲ!」

『それは絶対に違う』

「もう二度と合わないから!サヨナラ!!」

そう吐き捨てて彼女は出ていった。さて、どこで道を間違えたのだろう?……これってある意味、不幸な巡り合わせというか、いや、”結構年上の彼氏”が諸悪の根源なのではないだろうか? ともあれ、彼女はこれからどうやって男と付き合っていくのだろうか? 非常に興味のあるところだったが、それ以来、彼女と話をすることもなかったので、どうなったかは知る由もない。

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第3話:性の営みは密室の習慣である

by rmzo time to read: <1 min
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